牛とひき肉の間 – Food, Inc.を観て

常々誰かがやってくれている「牛」と「ひき肉」の越境作業には興味があった。
生き物から食べ物になるまでの過程を実感したいと思っていたので、初めて丸鶏を前にしたとき、既に内臓が除去されていたにも関わらず、なんだかとんでもないことをしているような衝撃を受けたのを覚えてる。

そこで「Food, Inc.」というアメリカの食品業界についてのドキュメンタリー。

普段私たちが口にしているものがどのようにして生産され、消費者の元に届けられているのか――。食の市場を司る企業の実態、人間都合で歪められた食の事情、突き詰めれば人間の健康に関わる問題へと発展するこの状況に警鐘を鳴らしている。(紹介文より)

 
 
 
 
 
 

 
 
もはや「食の安全」に収まる話ではなく、アメリカの食品産業のあり方が中央官庁と大企業との癒着、大企業のゆき過ぎた利益追求主義、移民問題、肥満など多くの社会問題につながっていることを俯瞰できる。
思考停止して安いものを買い続けることはその行為自体が社会に対するひとつの意思表示になってしまうということを痛感した。以下は衝撃的だった場面。

  • より多くの胸肉を得るため、鶏は20年前と比べて驚異的な早さで成長し、巨大に。コンテナーで詰め込まれて一生太陽にあたることなく育てられ屠殺を待つ。牛も同様。ホルモンによって肥大した自分の体を持ち上げることができない鶏の映像…。
  • 鶏を飼育する業者は1棟のコンテナーを購入するために$280,000(約240万)を銀行から借りる。精肉会社との契約では農家側は全く主導権がなく、施設増備を求められれば応じるしかない。そして更にローンを積まされ、利益を保つために低収入の移民(メキシコ人)が雇うことになる。
  • 安価なとうもろこしと大豆、遺伝子組換え済がスーパーにある9割の食品に含まれている。牛は牧草ではなく安価なとうもろこしが主な肥料。High fructose corn syrup、これは異性化糖のことで、「食品の裏側―みんな大好きな食品添加物 」で悪名高い添加物ブドウ糖果糖液糖を含む物質である。今の状態では口に入れることを避けることはできない…。
  • 低収入、共働きのため料理する暇もお金もないメキシコ人移民一家。$1以上するブロッコリーを1つ買うよりは99cでハンバーガーを食べる。父親、糖尿病のため失明の危機にあるが、医薬品が高すぎて手が出ない。健康なものを食べたいけどファーストフード以外に選択肢がない。2000年以後に生まれた移民の子供の半分が初期糖尿病にかかっている。
  • 食肉工場での仕事はアメリカで最も危険な仕事。そういった仕事につくのは違法移民、ラティーノ(中南米出身の人々の総称)。低賃金低待遇で10年働いた従業員が違法労働で逮捕されるも、さんざん酷使したアメリカ工場側はお咎めなし。
  • 1990年代、NAFTA(北米自由貿易協定)による貿易自由化によりアメリカからメキシコへ安いとうもろこしがなだれ込み、メキシコの農家の経営が壊滅的となった。食品会社Smithfieldは職にあぶれたメキシコ人農民をリクルートし、自社の精肉工場で雇用し始めた。一旦は労働条件が改善したものの、ファーストフード業界の需要が拡大したことによって福利厚生のマージンがなくなり、低賃金、低待遇、危険な仕事となっていった。未だに屠殺向上に従事する多くの労働者は移民であり、怪我、死に至る事故も多い。
  • ベトナム戦争で散布された枯葉剤と同じ成分の除草剤Roundupを製造する化学会社Monsanto。この除草剤に耐久力があるのは同社が特許を持つ遺伝子組み換え大豆のみ。Monsantoは農家を徹底的に調査し同社が販売する大豆以外の大豆を持つ者を特許侵害で訴えている。
  • そこに大豆洗浄業者の男性。洗浄することによってMonsantoの大豆と毎年植えることのできる大豆を分別することができるが、この仕組みは他の農家に特許侵害をけしかけたとされMonsantoから訴えられる。裁判費用だけで$25,000(約212万円)。友人知人がどんどん疎遠に…。
  • 遺伝子組み換えのラベルを貼らなくてよいとする法律が通りかけた(カルフォルニア州)。ブッシュ政権と大企業の癒着、ロビイストによる規制化の圧力が背景。規制するのは他にアメリカ合衆国農務省(United States Department of Agriculture)、アメリカ食品医薬品局 (Food and Drug Administration)。ファーストフードチェーンの多くはカロリー、トランス脂肪酸の表示を拒んでいる。
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    現実なだけに痛ましい以上の場面ばかり…。
    裁判費用だけで$400,000かかった農家の男性の一言が大企業(強者)に完全有利な社会構造を象徴している。

    How can a farmer defend himself against a multinational corporation like Monsanto?
    どうやったらひとりの農民がMonsantoみたいなグローバル大企業を相手どって戦えるのか?

    エリック シュローサー
    草思社
    発売日:2001-08-09

     
     
     
     
     
     
     
     

    ドキュメンタリーにはFirst Food Nationの著者Eric Schlosserが出演している。「Food, Inc.」は残念ながら日本で封切りされてないようだけどFirst Food Nationは邦訳「ファストフードが世界を食いつくす」が出てるのでお勧め。ヒステリックなアンチ本ではないだけに(いや立場は完全にアンチだけど筆者がハンバーガーを美味しく食べてる場面がある)しみじみ怖いなあと思わされた。
    テーマはマクドナルドの誕生に始まり、子供を消費者のターゲットに置いたマックの戦略、牛肉工場で働く労働者の待遇の悪さ(おそらく最低最悪の仕事)と幅広いが、取材や具体的数字を軸にした骨太のドキュメンタリーだ。

    以下は私よりずっと分かりやすく紹介されてる記事↓
    衝撃の映画Food, Inc. フード・インク
    映画『フード・インク』(Food, Inc.)を観た
    私ももっとシンプルに文章が書けるようになりたいのう。

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