映画・ドラマ

The Artist -無声映画の魅力

I’m not a puppet, I’m an artist.

久々に映画館に行って観た映画が大当たりだったのでこれを書かずにはおれない。
フランス発の無声白黒映画と聞いて、なんだか小難しい抽象的な話だったらいやだなと思ったのだがとてもわかりやすい、心が温まる映画でした。
アカデミー賞で5冠を獲り、「仏映画史上最多の賞を獲得した」というニュースも全く知らなかったが、これほど褒め称えられるというのは観ればわかります。
(トレイラーはなんだかタップダンスの映画みたいだけど、そういうわけでもない)

私はかろうじて白黒映画を観たことがあるだけで一回も無声映画は観たことはないけれど、この映画は無声映画だけが伝えられるものが確かにあるよと証明しているような気がする。技術的に劣ってしまっている点では同じだけど、いまや誰も使う人はいないポケベルではなく、今も愛好家がいる二眼レフのような存在というか。

主演俳優はフランス人なのだが、チャーミングな笑顔で裏表がなく誰にでもきさくな大スターといういそうでいなさそうなタイプがものすごくうまかった。この彼は商売柄笑顔は大得意なんだけど、スタッフ・共演者に向ける人当たりのいい笑顔、絶望のどん底にあるときの笑顔とみじめさに打ちのめされたときの笑顔、そしてたった一回だけ見せる泣き笑いの笑顔が見事にばらばらで、あほみたいな感想だけど役者ってすごいなー。
アカデミー賞主演男優賞初のフランス人俳優だそうです。

私は知らなかったのだが無声映画というのは無音なのではなく、ただ人の声だけが聞こえない映画だ。俳優がしゃべる口パクの動きの後にセリフが黒背景に白い文字で字幕のように出て、背景にインスツルメンタルの音楽がずっとかかっている、という感じ。
ある場面でそれまでかかっていた音楽もなり止みシーーーーーンとする箇所があるのだけど、そのときは身じろぎも忘れて引き込まれてしまった。このときの感覚と比べると、今の映画はBGMに爆発音に金切り声、と音にあふれていると実感する。音量が大きい方が心に届くとは限らないし、声が大きい人の方に人が集まるとは限らないんだね。

続きはネタばれ含むグダグダ
(さらに…)

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オースティンを語る人々

「Becoming Jane」(邦題”ジェイン・オースティン 秘められた恋”)を見た。こんな最近(2008)の映画が図書館にあったんですよ…しかも5,6本。図書館だけに作家に敬意を込めたのかしら。

Buena Vista Home Entertainment
発売日:

  

 

 

 
 

ネタばれあります。
私はすごく好きでした。個性的すぎなAnne Hathawayの顔にももう慣れた。
知的で快活(ときどき生意気)という「高慢と偏見」のElizabethと「Emma」のEmmaそのままのキャラ設定で、これはもう想像通りでフンフンという感じ。
ツボだったのヒーロー役のJames McAvoy。タイトルロールのJaneに観衆の目が集中するのは当然のことだけど彼のときどき見せる一瞬の表情であっさりヒロインと対等な立場になった。私の中では。
とりわけBallroom(舞踏場)のダンスシーンのMcAvoyの出現ぶりは身震い。↓この動画の1:09あたり。
 

この男女が列に並んで踊るイギリスの伝統的なダンスはヴィクトリア期を描く映画を見てるとほんとによく出てくるのだけど、このダンス自体はとりたてて魅力的なものではない。
ただ地味なように見えて込み入った足運びとくるくる変わるポジショニングを見る度、(こんなのが社交の必須課目なんて大変だなあ)と思っていたのだけどこのMcAvoy!すごい!えい、この!かっこいいぞ!
ここしかないというタイミングに合わせてくるところがミュージカルっぽくてすごくツボだった…。

しかし生粋のオースティンオタク(と言ってしまえ)達はそんなところに惑わされなかったようで、割とシビアな意見が出てるようです。
この映画はそもそもJon Spenceという人が書いた本が原作。
Becoming Jane Austen: A Life ビカミング・ジェイン・オースティン
Amazonによるとこの本は

作品や日記などの資料をもとに、ジェイン・オースティンがほんとうはどのような女性であったのか、ロマンスの実態はどうだったのかを大胆な解釈で明らかにする。映画「ビカミング・ジェーン」の原作ともなった最新評伝。

とのことで、あくまでフィクションではない。
ところが映画では、それぞれ別の人間と結婚しなくてはならなくなった二人が駆け落ちを試みる場面があるのだが、元になった原作にはそういう考察はないらしいのだ。See Jane Elope
証明できないことをオースティンの伝記映画に盛り込んでいることについて「不正確」という批判は確かに的を得ている。

まあ私のように1本のラブストーリーとして観てしまえる人ならなんの不都合もないのですけど。
オースティンが好きなら好きなほど映画は厳しい評価、という印象。

こちらはアメリカ人オースティン大ファンの方のブログ。オースティン著作に限らずヴィクトリア時代の衣装や食事についても秀逸な記事を書いてらっしゃいます。
Jane Austen’s World
たぶんオースティン研究家を名乗れるレベル。

イギリスの映画を観る

近くにある公立図書館はDVDが豊富。比較的最近の映画も揃っていたりするのでほくほくと借りています。日本にいるときはTSUTAYAにしろ映画館にしろ映画はお金を出して観るものだったのでこうして公共サービスで利用できるのがうれしい♪

私はイギリスの女性作家Jane Austin(wiki:ジェーン・オースティン)が大好きなので、彼女が描いた18C後半が舞台のイギリス映画は大好物。
一時期そればかり観ていたのでそのまとめ。

よく言われるようにイギリス英語はここアメリカの英語、それも南部の英語と全く別物。
発音も語彙も表現の仕方も異なるので、普段ハリウッド映画を観る以上に英語が分からない。それでもこの時代が好きなので観るのである。DVDなのをいいことに字幕を付けて何度も一時停止しては単語を調べるという手間をかけて…。「知りたい」という欲望はすごい。

ジョン・グレニスター
アイ・ヴィ・シー
発売日:2001-03-25

1972年Doran Godwin主演、ドラマで全6話。何度も映像化していて、最近でも2010年に映画化されている。
1話45分の全6話なので、オースティン得意の人間観察の妙をたっぷり堪能。
エルトン夫人という登場人物の人間の浅さがあからさま過ぎておもしろい。このころのイギリスにもこういう自分が中心にならないと気が済まない人っていたのだろうか。いやいたんだろうが。
hideous, vexatious, vain, odious, overweening, underbred, affectation, vulgar, remiss…
これ全部エルトン夫妻のつまらない人格ぶりを表すのに出てきた語彙。いつも落ち着いてわきまえていて必要以上に自分の意見を口に出さないエマがエルトン夫妻について言及するときにはボロボロにけなしてて正直で小気味よい。
それにしても主演のDoran Godwinのくせ毛具合が不思議で仕方なかった。生え際だけくるんくるん…。オースティン得意の、とりわけ美人というわけでもないけどチャーミングで聡明、という女性像にはぴったりだったが。

Adrian Shergold
BBC Warner
発売日:2008-01-15

「Persuasion」説得、という意味で、「他人からの説得によって一度は自分の決意を翻したヒロインが…」という話。控え目で誠実というオースティンとしては珍しい属性タイプのヒロインだったが、これはこれでしっくりと物語にはまっている感じがした。Bathの街並みを走り抜けるヒロイン、ここがクライマックスでしょうという見せ場。肌が抜けるように白く伏せた瞼が憂いを含んでいる…この女優さん美しすぎる。 
 
オースティン真骨頂の「高慢と偏見」はもちろんリストから外せない。言うまでもなくブリジット・ジョーンズの元ネタである。コリン・ファースがダーシーを演じている、いうなればオリジナル版を観たいけれども2カ月間ずっと貸出されている…!
いつか晴れた日に [DVD] プライドと偏見 [DVD] Pride & Prejudice (1995) (2pc) (Spec) [DVD] [Import] 

 
そしてこれが表紙にノックアウトされて借りた「The way we live now」というドラマ。リンクが見つからないので画像だけ。どうにもこのジャケットには惹かれるでしょう。こ、この女の人、なに?小さいのにこの存在感。キーパーソン?なのは間違いないけれど、…み、観たい!!

 私は初めて知ったのだがAnthony Trollope(アンソニー・トロロープ)という作家の超有名小説のドラマ化だった。1875年の初版で、これは2001年に映像化されたもの。すごくツボな話だった。

舞台はビクトリア期のロンドン上流社会。資金力にものをいわせて成り上がろうとするユダヤ人実業家を中心に、嫉妬、自尊心、見栄、浅はかさ、虚栄心などが観ていて痛々しくなるくらいつぶさに描写されている。痛烈な皮肉を幾重にも感じるけれどもどうにも憎めない人々の姿。時代は違えどもこれが人間だ…。

↓元になった小説。翻訳されてないのが残念。難しいとは思うけど読んでみようかな。
The Way We Live Now (Oxford World's Classics)
The Way We Live Now (Oxford World’s Classics)

牛とひき肉の間 – Food, Inc.を観て

常々誰かがやってくれている「牛」と「ひき肉」の越境作業には興味があった。
生き物から食べ物になるまでの過程を実感したいと思っていたので、初めて丸鶏を前にしたとき、既に内臓が除去されていたにも関わらず、なんだかとんでもないことをしているような衝撃を受けたのを覚えてる。

そこで「Food, Inc.」というアメリカの食品業界についてのドキュメンタリー。

普段私たちが口にしているものがどのようにして生産され、消費者の元に届けられているのか――。食の市場を司る企業の実態、人間都合で歪められた食の事情、突き詰めれば人間の健康に関わる問題へと発展するこの状況に警鐘を鳴らしている。(紹介文より)

 
 
 
 
 
 

 
 
もはや「食の安全」に収まる話ではなく、アメリカの食品産業のあり方が中央官庁と大企業との癒着、大企業のゆき過ぎた利益追求主義、移民問題、肥満など多くの社会問題につながっていることを俯瞰できる。
思考停止して安いものを買い続けることはその行為自体が社会に対するひとつの意思表示になってしまうということを痛感した。以下は衝撃的だった場面。

  • より多くの胸肉を得るため、鶏は20年前と比べて驚異的な早さで成長し、巨大に。コンテナーで詰め込まれて一生太陽にあたることなく育てられ屠殺を待つ。牛も同様。ホルモンによって肥大した自分の体を持ち上げることができない鶏の映像…。
  • 鶏を飼育する業者は1棟のコンテナーを購入するために$280,000(約240万)を銀行から借りる。精肉会社との契約では農家側は全く主導権がなく、施設増備を求められれば応じるしかない。そして更にローンを積まされ、利益を保つために低収入の移民(メキシコ人)が雇うことになる。
  • 安価なとうもろこしと大豆、遺伝子組換え済がスーパーにある9割の食品に含まれている。牛は牧草ではなく安価なとうもろこしが主な肥料。High fructose corn syrup、これは異性化糖のことで、「食品の裏側―みんな大好きな食品添加物 」で悪名高い添加物ブドウ糖果糖液糖を含む物質である。今の状態では口に入れることを避けることはできない…。
  • 低収入、共働きのため料理する暇もお金もないメキシコ人移民一家。$1以上するブロッコリーを1つ買うよりは99cでハンバーガーを食べる。父親、糖尿病のため失明の危機にあるが、医薬品が高すぎて手が出ない。健康なものを食べたいけどファーストフード以外に選択肢がない。2000年以後に生まれた移民の子供の半分が初期糖尿病にかかっている。
  • 食肉工場での仕事はアメリカで最も危険な仕事。そういった仕事につくのは違法移民、ラティーノ(中南米出身の人々の総称)。低賃金低待遇で10年働いた従業員が違法労働で逮捕されるも、さんざん酷使したアメリカ工場側はお咎めなし。
  • 1990年代、NAFTA(北米自由貿易協定)による貿易自由化によりアメリカからメキシコへ安いとうもろこしがなだれ込み、メキシコの農家の経営が壊滅的となった。食品会社Smithfieldは職にあぶれたメキシコ人農民をリクルートし、自社の精肉工場で雇用し始めた。一旦は労働条件が改善したものの、ファーストフード業界の需要が拡大したことによって福利厚生のマージンがなくなり、低賃金、低待遇、危険な仕事となっていった。未だに屠殺向上に従事する多くの労働者は移民であり、怪我、死に至る事故も多い。
  • ベトナム戦争で散布された枯葉剤と同じ成分の除草剤Roundupを製造する化学会社Monsanto。この除草剤に耐久力があるのは同社が特許を持つ遺伝子組み換え大豆のみ。Monsantoは農家を徹底的に調査し同社が販売する大豆以外の大豆を持つ者を特許侵害で訴えている。
  • そこに大豆洗浄業者の男性。洗浄することによってMonsantoの大豆と毎年植えることのできる大豆を分別することができるが、この仕組みは他の農家に特許侵害をけしかけたとされMonsantoから訴えられる。裁判費用だけで$25,000(約212万円)。友人知人がどんどん疎遠に…。
  • 遺伝子組み換えのラベルを貼らなくてよいとする法律が通りかけた(カルフォルニア州)。ブッシュ政権と大企業の癒着、ロビイストによる規制化の圧力が背景。規制するのは他にアメリカ合衆国農務省(United States Department of Agriculture)、アメリカ食品医薬品局 (Food and Drug Administration)。ファーストフードチェーンの多くはカロリー、トランス脂肪酸の表示を拒んでいる。
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    現実なだけに痛ましい以上の場面ばかり…。
    裁判費用だけで$400,000かかった農家の男性の一言が大企業(強者)に完全有利な社会構造を象徴している。

    How can a farmer defend himself against a multinational corporation like Monsanto?
    どうやったらひとりの農民がMonsantoみたいなグローバル大企業を相手どって戦えるのか?

    エリック シュローサー
    草思社
    発売日:2001-08-09

     
     
     
     
     
     
     
     

    ドキュメンタリーにはFirst Food Nationの著者Eric Schlosserが出演している。「Food, Inc.」は残念ながら日本で封切りされてないようだけどFirst Food Nationは邦訳「ファストフードが世界を食いつくす」が出てるのでお勧め。ヒステリックなアンチ本ではないだけに(いや立場は完全にアンチだけど筆者がハンバーガーを美味しく食べてる場面がある)しみじみ怖いなあと思わされた。
    テーマはマクドナルドの誕生に始まり、子供を消費者のターゲットに置いたマックの戦略、牛肉工場で働く労働者の待遇の悪さ(おそらく最低最悪の仕事)と幅広いが、取材や具体的数字を軸にした骨太のドキュメンタリーだ。

    以下は私よりずっと分かりやすく紹介されてる記事↓
    衝撃の映画Food, Inc. フード・インク
    映画『フード・インク』(Food, Inc.)を観た
    私ももっとシンプルに文章が書けるようになりたいのう。

    私の基本動詞3つ

    最近ジュリア・ロバーツの映画eat pray loveを観たのでその後自分の基本になっている動詞はなんだろうと考えてみたがeat, read まではさくっと挙がったものの、あと一つ思い浮かばない。
    love, play, cook, write, drive
    loveを一日に必ず一回使うアメリカ人と比べたらしっくりこないしplayと言うほど遊んでない。料理してない。書いてない。運転はしているけど必要だからやっているわけでとりわけ思い入れはない。
    それなら二つでいいかと、食べると読むに落ち着いた。
    せっかくだから習い始めたスペイン語の動詞で表して見た。comerとleer。
    Como y leo. =I eat and read.