絵画・アート

ヌードを描く

継続受講中の「Drawing II」アートの授業です。
前学期は静物画中心だったのですが、今学期はLife Drawing(実在のモデル写生)つまり、ヌードモデルです!ひゃー!
中学高校と美術部で水彩と油絵を描いていたけど、ヌードモデルを呼ぶなんて初めての経験。テレビでしか見たことのない職業の一つ。ついに私もこう言えるのか。我こそはヌードモデルを描く者ぞ。

最初のモデルさんは女性で、テネシー体型と言っちゃうけれども割とふくよかな方だった。しかしそこは恐るべしモデル体型でなんと8頭身。顔が小さくて足が長い。
彼女はプロのヌードモデルなので、3分ごとに今まで未出のポーズを取り続ける事が出来るし、ポーズを取ってからは微動だにしない。話を聞くと、彫刻のモデルの時などは数日にわたって同じポーズをとり続けることもあるというので、仕事としてやっているレベルは違うと思う。

(さらに…)

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Chuck Close風の自画像

9月からの秋学期が先週末終わり、学生はそれぞれ実家やバケーションに向けてこの小さな町を発って行きました。アメリカではクリスマス休暇は人々が一年で最も楽しみにしている休暇と言っても過言ではありません。サンクスギビングの休暇(11月最終週)が終わった瞬間ラジオからは新旧混じったクリスマスソングが延々と流れ始め、赤いリボンを巻いたリースが道路脇の街灯を彩りました。

さて、私が参加していた「Introduction to Drawing I」(描画入門I )の最後の課題の一つは画家Chuck Close風の絵。
Chuck Closeとは、アメリカの有名なアーチストで、巨大なキャンパスのポートレイト(肖像画)で知られている。このどう見ても写真のようなこの自画像、なんと絵。
 
 
 
 
 
 

彼はキャンパスを四角いマス目で分解して、その一つ一つの四角に一見周囲と関係がないように見える濃淡や色味をのせることによって一枚の巨大な絵を完成させる。
近くで見ると四角いマス目がしっかり見えていてまるで写真のピクセルなのに、距離を置いてみるときちんと人の顔に見えるというこの作風、強烈なインパクトがあります。
「これはアートなのか?写真をトレースしたら”ズル”という判断基準からしてみれば写真をマス目で区切って起こしているこの絵は”ズル”いのか?」
そんな議論をしました。よく見ると

というわけで、この人のやり方で自画像を描いてみようということで、まずは画用紙をマス目につけるところからスタート。素描なのでボールペン・もしくはインクペン使用。

18”×24”(45,7×61cm)の画用紙を、元になる写真と同じマス目数で区切り、自分で決めた□から■まで9段階の濃淡をマス目一つ一つに落としていく。
一旦完成したものに対して「もっと濃淡の幅を広く」という先生の声が入ったので更に髪を黒く、陰影を黒く…


完成画。(クリックで拡大可)
マス目がChuck Closeの絵に比べるとずっと大きいけど、これはーそれでも大変だった(インクペン2本なくなった)。
線をどんどん重ねることによって陰影が濃くなるので、マス目マス目に集中していてふと立って遠くから見てみるとハッとするほど一つの絵になっているのがおもしろかった。これ、白黒でやるとちょっとおどろおどろしい(ナナシノゲエムみたいじゃないですか)ので、色つけて油か水彩でまたやりたい。

謎のアーチスト、Banksy

描画の授業では、先生が割と色々なアーチストを紹介してくれて、そのほとんどを私は知らないので興味深い。


断トツで「か、かっこいいー!」と思ったのは謎のグラフィックアーチスト、Banksy
Banksyは通り名で、その正体は基本的に謎。
世界各地の壁や電信柱に強烈な風刺やブラックユーモアを交えた絵を描いて渡り歩く。
Wikipediaによるとイギリス、ブリストル生まれ。作風はアンチ資本主義・アンチ戦争・アンチファシズム・アンチ権威主義で知られ、裸の黒人の子どもを挟んでマクドナルドのドナルドとミッキーマウスがにこやかに歩いている絵、イギリスの兵隊が立ちションしている絵、乙女チックなSATなど、資本主義の代表ともいえる企業やイギリス王室など、力を持つ組織を小馬鹿にする絵で知られている。

公共の壁に堂々とそんな感じの絵を描いてしまうので、当然「ただの公共物破損罪だ」という批判もどっさり受けている模様。
でもこの人の絵、すごくかっこいい!ステンシル(型紙を置いて上から色をつける)によるこれらの絵、場所が場所なの描いたらでさっさと逃げないといけない。(笑)
おそらく神業の如くあっという間に仕上げるのでしょう。

先生が画集を持っていたのですが、これはおそらく自己出版したWall and Pieceです。美術館で見れるタイプの画家じゃないので、欲しいなあ。
Wall and Piece
Wall and Piece

元々こういう風刺が大好きなイギリス国民の間で英雄的な人気者となっているBanksy、ちょうど一年前の2009年、コペンハーゲンで温暖化のサミットが開かれたころ、Banksyの落書きがニュースになっていた。
BBC news :Banksy art tackles global warming
 
ロンドンのカムデン地区に現れたこの壁画、「地球温暖化なんて信じません」という文字が水面で隠れて見えなくなっている、というもの。
温暖化自体を否定する科学者を痛烈に当てこすってます。BBC Newsも、最後の一文「目標を設定することなくサミットは終わった」でチクリと。さすがBanksyを生んだ「嫌味の国」だと納得したのでした。。

インクでValue Study

value study1以前鉛筆でValue study(明度の研究)をしたが、次は黒インクで同じことをした。
黒インクと言っても使うのは極普通の、たまにインクが滲む例のボールペン。
夫がゲルインクボールペンという種類のシグノというペンが好きで家に何十本もあるのだけど、影を表現する際塗りつぶすわけではなく線を重ねることによって濃い影を表現するという描き方のインストラクションだったのでこちらの方が味がでるかなと普通のボールペンを選んでみた。(クリックで拡大可)
value study2鉛筆のときと同様写真から描くので、選んだのは”American Woman”という写真集に載っていたGwynes Paltrowと母であるBlythe Dannerの親子2ショット写真。ギネス・パトロワ。
オースティンのエマも演じたりしているアメリカ人の女優さん。美しいですね。
耳の下の輪郭の線から二の腕の辺りは人体の骨格で一番美しいところ(私談)なので、腕の振るいどころ。デブにならないように、細すぎないように慎重に輪郭の線をつけていきます。その後は明るさと濃さの強弱を線で表現。線の交差を重ねていくことによって濃い部分の影を作っていくのです。
拡大するとこういう感じ。

value study2
この線の交差によって濃淡をつけるというのになぜだかはまってしまって、ノートが落書きだらけです。

Smokey Mt.の紅葉

在住者によると「冬はしっかり寒い。日によって温度差が激しい」というテネシー州。アメリカの州の中では南部に分類されるといえども冬には雪が降り、しっかり冬模様になるとのこと。
春先に来た私にとって初めて迎える季節なので朝晩の底冷えを今か今かと待ち構えてましたが、11月も半ばを過ぎたのにも関わらずいまだ拍子抜けするくらい暖かいです。今日などは最高気温13℃、日差しが出ている間は半袖でした。
10月の半ばから町なかの葉っぱの色が変わり始めて、道端のなんてことない木の紅葉のきれいなこと。あっという間に寒くなって落葉してしまうと思ってたので写真を撮りまくってましたがあれから1ヶ月経った今も尚色とりどりの葉がまだ枝に繁ってます。紅色、黄色、橙色の葉。
意外に長い紅葉シーズンでした。思ってたほど刹那的ではなかったなあ。

さて、テネシー州には東アメリカ随一の観光収入を誇るスモーキーマウンテンという国立公園があるのですが、この間そこにハイキングに行き紅葉の美しさに胸打たれました。陽射しを透かして見た時の紅色は息を飲むほどきれいです。高地で気温が少し低いため町中よりは紅葉が進んでました。
葉っぱを数枚持って帰ってしばしテーブルの上に置いておいたのですがあっという間にかさかさになってしました。自然界のものとは思えないこの鮮やかな赤は何度見ても不思議。

木炭で描く

絵の授業は黙々と進行しており、鉛筆から木炭絵になってから3週間経った。
高校時代美術部だったにも関わらず、木炭で描くのはここにきて初めての体験。始める前は新しい素材にわくわくしていたけど、蓋を開けてみたらその扱いにくさにびっくりした。

まず固い。
形はチョークのようで、細長い長方形をしているのだが、少し角をカッターで削ってから画用紙に擦りつけないと爪でひっかいた後のような窪みが紙に付いてしまうので厄介。この窪みはなぞっても中々黒で埋まらない。
そして木炭はなかなか消しゴムで消えない。
薄くはなるけれども、完全には消えない。
そう思うと鉛筆はコントロールしやすかった。2B、4B、6Bと固さは自由に選べたし、消しゴムで消えない線はない、とても扱いやすかった。

とはいえ数枚静物画を描いている内に徐々におもしろいなと思い始めた。木炭は失敗のリスクが大きいけれども思い切って強い線を引いた時のインパクトが鉛筆の比ではないのがおもしろい。
鉛筆でしつこいほどやった明度の練習を木炭でも。

Charcoal drawing
正直これは飽きました。(画像はクリックで拡大)

そして今はNegative Drawingという画法をやっている。これは何も「否定的な画法」というわけではなく、モデルとなるモノ以外のものを塗るというやり方。Googleさんに聞くとこんな感じ。おもしろいでしょう。鉛筆には無理で木炭だけが出せる限りなく濃い黒によって対象の輪郭を浮き立たすことができるのだ。

Negative drawing英辞郎によるとNegativeは「1.否定の 2.拒否の 3.悪い」というおなじみの意味だけどこれは形容詞として使われた場合で、名詞としては最初に「[写真の]ネガ、陰画」という意味だった。
フォーク難しい…。

 
直近の課題で、これもNegative Drawingの一つとしてEraser Drawing(”消しゴム画法”?かな)というのをやったのだが、これが楽しいのなんの。まず木炭で紙一面を塗りつぶして、そこに明度の濃淡を消しゴム・木炭で足していくやりかた。

dogこれが初めて書いたEraser Drawing。雑誌から適当に選んだ写真。この毛並みは割と描き(消し)やすかった。ふさふさのシェパードじゃなくてよかった。

Value(明度)の練習

8月末から12月初旬までの秋学期ですが、ようやく「秋」らしくなってきました。正確に言うと「あれ?秋抜かしてない?」という位の肌寒さです。
数年住んでる人の話だと、いつも急激に気温が落ちるということ。着るものに困るこの頃です。とはいえアメリカ人大学生の9割は服装に全く興味が無さそうなんですけどね。(他国からの留学生の方がオシャレ)
話が反れましたが絵の授業です。(画像はクリックで拡大可)
 
この4枚は課題で、円柱形(cylinder)のものを10個スケッチする、というものでテーマは正確さ。
一枚に2個の物体をスケッチしたので形5枚になりました。
円柱形のものは曲線部分が難しいので鉛筆や棒を横にして角度を計りながら描きます。物体の上半分を隠して絵と比べると全然曲線の傾きが違っていたりして、そっくりそのまま物体を紙に落としこむことの難しさ、いや不可能さを感じました。当たり前ですが写真と絵は全く違うのだなと。

正確さを根気強く追求したあと、テーマがValue(明度)へ移行。
下の絵は白黒写真から鉛筆でスケッチする課題です。
最初に提出したときは白と黒の間のコントラストを十分に出し切れていなかったので、再度陰影を付け加えるよう言われました。

こうして並べてみるとまだ車のフロントガラス、ライトの左上部分は明るすぎるのがわかります。
陰影は鉛筆での「黒」なのでちょっと反射してしまうから明るく見えるというのもありますが、とはいえ写真ほど黒と白の間のバリエーションがないことも確認できます。白飛び(フラッシュや反射による強い光によって写真データに色が残らないこと。写真撮る人たちは一生懸命避ける現象)している写真でない限り、画用紙の「白」はほとんど残らないのです。

それにしても元の写真のサイズは2L、スケッチブックは9×12インチで2倍以上大きさが違うんですが、こうしてスキャンした絵と写真を同サイズに並べて見るとどれだけ形がずれているかもろにわかってしまうという…。
うーん、あからさまに歪んでいる!

こんな風に絵の描き方を教わっています

「Introduction to Drawing」(絵画入門)の授業でどんなことをしているかです。
生徒の数は10人弱で週2回、2時間40分と長丁場の授業。担当教授は博士を持ってる教授なのに「Carl(ファーストネーム)で呼んで」と非常に気さく。あご髭を3本おさげにして、ホッブスとカルバンが並んだTシャツを着たりしていてやはり只者ではない。

初回の課題は鉛筆による自画像。学期の最後にまた自画像を描いて比べるとのこと。

本格的な講義の最初のテーマは「正確さ」
2H、2B、4B、6B、8Bの鉛筆を使って、いかに正確に、物があるがままの通り描くかということを約3週間。
写生するものは丸三角四角が組み合わさった二次元の図面に始まり、さまざまな形の物体を重ねた静物画、白黒写真、カラー写真と進んだ。
対象がなんであれこの時点で一番重要なのは正確さで、先生からは「この線を延長するとこの角にぶつかるけど、君のはぶつからない」とか、「このアングル(鉛筆を斜めに傾けながら)は君の場合実際より鋭すぎる」とかコメントをもらってひたすら精密さを目指して鉛筆を走らせるのだった。
あるがままを紙に落とし込むのは本当に難しくて、物体それぞれの辺の長さの割合・曲線の反り方が少しでもずれると全体でどこかの割合が歪んでいる。
きっちり見たままのスケッチをストイックに求められた3週間の後半部分は正直クラスメートも息切れしていて「全然クリエイティブじゃない」という声も聞かれた。

次にやったのはblind contour drawing(ブラインド・コントゥール・ドローイング法)という描き方。
手元のスケッチブックを見ずに、対象物の輪郭を目で追いかけながら、あくまで下は見ずに線で描く方法。描いてる絵を見ないので、歪む、曲がる、狂う。
でもこれが、手元を見ながら描いていたら自分では絶対に描けないような絵がいつの間にかできあがっているのですごくおもしろかった。自分にこんな絵が描けたんだ、という新鮮な気持ちになった。
どんな絵になるかというと、Googleさんに聞いたらこんな感じ
こう、自由な感じで面白い絵でしょう。

そして今はvalue(明度)にフォーカスを置いています。
例えば、林檎の絵を描いてと言われたら人は普通線で林檎と周りの空間の境界を分けるけれども、現実にはそういった線は存在しない。それを表現するということです。
空間と物体のコントラストを表現することによって、二次元の紙の上にいかに立体を作り出すか、ということを練習している。
奥にある静物に片側から強いライトをあてて写生する。

こうして初回から今まで、平面の精密度と奥ゆきのもたせ方にそれぞれフォーカスしてきたことを思い返してみると、前に習ったことを取り入れて次のステップに進んでいるのがわかる。
今週からは木炭を使い始めた。初めて使ったけれど、鉛筆とは全然違う使い心地だった。

たまたまなのだがこの感性磨かれるアートクラスとロジカル重視のビジネスの授業が同じ曜日。どちらも課題が多くて大変だけれど、脳みそをバランス良く使ってる気がして自己満足度が高いのであった。